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その21.≪「越後獅子」はオペラで聴こう?!≫
門弟の1人から、「さくらさくら」を群舞に振り付けてくれと頼まれ
てたんですが、「Sohbu−Festa」にかかりっきりでお預けにしておい
たので、今日CDを買いに町に出掛けました。長崎ではかなり古くて
大きい、純邦楽や演歌なども沢山取り揃えている、今時貴重な楽器店
に行ってみたのですが・・・なんと「さくらさくら」がないんです!
多分そんな事じゃないかと予想はしていたので、それ程ショックは受
けませんでしたが・・・ ・
童謡集や「懐かしのメロディー」や「ふるさとの歌」なんてのは沢山
あるんですが、どれにも「さくらさくら」は入ってませんでした。ク
ラシックのソプラノ歌手が歌ってる「日本歌曲集」には入ってました
が、ちょっと違和感がありましたし、店員さんに頼んで片っ端から検
索して貰えば見つけられたのかもしれませんが、それでは期日に間に
合わないので、結局和洋合奏の筝曲のCDで間に合わせる事にしまし
た。歌がないので振り付け難いんですが、しょうがないです。 ・
以前、「今の若者は『さくらさくら』も『黒田節』も唄えない」って
書いたら、「まさか!」という不信(?)の声がいくつも届きました
が、現実に僕の周りの若者達は(僕の子供達も含めて)殆ど唄えませ
んし、中には題名すら聴いた事がないと言う若者もいます。CDを買
おうと思っても、簡単には手に入らないんですから、当然耳にする機
会もない訳ですし、今後益々忘れ去られてしまうのは目に見えていま
す。ドンドン新しい唄が作られていく反面、消えていく唄があるのは
当然といえば当然ですから、そんなに感傷的になる必要はないのかも
しれませんが・・・やっぱり寂しいです。 ・
話は変わりますが、クラシック(特にオペラ)ファンの方なら、歌劇
「蝶々夫人」の中に日本のメロディーが織り込まれている事は、よく
ご存知だと思います。明治時代に長崎に在住していた英国商人、トー
マス・グラバーとその夫人が、プッチーニからの依頼を受けて、当時
流行っていた「宮さん、宮さん」などのメロディーを採譜して送った
ものが、巧みに使われています。そしてそれらのメロディーの中に、
長唄「越後獅子」の一節も含まれています。「宮さん、宮さん」は、
既に殆どの日本人が忘れてしまってますが、「越後獅子」は現在でも
舞踊会や長唄の演奏会でよく耳にする、ポピュラーで人気の高い曲で
あることも、日舞・邦楽愛好者なら、誰でも知っている事です。 ・
歌劇「蝶々夫人」は、欧米人から見れば、アジアを舞台にしたエキゾ
チックな風変わりな作品の筈なんですが、その美しい曲と普遍的な悲
恋物語が、世界中の人達に愛されて、今でも世界各地で上演が繰り返
されていますし、恐らく100年後でも、「スカラ座」や「メトロポ
リタン歌劇場」の主要なレパートリーの1つとして、上演されている
ことでしょう。しかし一方で長唄「越後獅子」はと言うと・・・今で
こそまだまだ人気が高いとは言うものの、現代の若者達の音楽シーン
に詳しい人に訊けば、「100年後にも頻繁に上演されているに違い
ない」と確信を持って言える人は、殆どいないと思います。 ・
毎月、数多くの舞踊会や邦楽演奏会が催されている現状を知る人は、
僕のこんな独り言など一笑にふすでしょうし、出来れば僕の予感など
当たって欲しくはないのですが・・・「『越後獅子』などの日本の古
曲を聞きたければ、歌劇『蝶々夫人』を観に行きなさい」と、学校の
音楽の先生が指導する日が来ないとは、誰にも言い切れないのではな
いでしょうか?! ・
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